夫婦茶碗
町田康(著) 新潮文庫 ¥420(税込)
私が初めて読んだ町田さんの作品。
というかミュージシャンだと知ったのは後でした。
買ったのはいつ頃だろう?
だいぶ前な事は確か。というのも
当時つきあっていた人とちょっと色々あって
「夫婦茶碗」というタイトルに惹かれて
手にとったのを覚えているから。
本屋に行くとその時買った本で
自分のアンテナとか興味とか悩みがわかる(笑)
本を開いた瞬間から町田ワールドに引きずり込まれた。
小気味いいテンポがまるで落語のようで
1ページ読まない内にレジへ歩き出していた。
本屋から小走りで出て(心の中ではスキップ状態)
電車に乗り込みズゴゴゴゴーと読みふけった。
ソファーに並んで腰をかけ押し黙っている夫婦。
そんな描写からこの物語は始まる。
べらんめぇ口調で天才的なポジティブ頭の夫と
謙虚で貞淑で粗雑で長屋のおかみさんのような妻。
夫が働かないのでお金もないから食べるものも無い。
だからこの夫婦は二人並んで押し黙っていたのである。
一度口を開けばお金や仕事や食べ物の話に
なってしまうので「働けば口をきけるようになる」と
“社会貢献”と愛する妻の為に新しい職業を思いつくが・・・
この本はおかしいです。
「面白い」とか「笑える」とかそういう言葉じゃ表せない
「おかしさ」が怒涛のように襲い読み手を圧倒させます。
詩心と色気のあるものを妻に買わせたくて必死になる夫。
この本で私が好きな箇所は突如として浮上した「鶏卵問題」。
「たかが」鶏卵に異様なまでの執着を見せ
(↑店主注:悪気はありません)
一家の滅亡を防ぐべく日夜頭を悩ませる夫。
このくだりを読んだ時に私の頭の中に浮かんだ絵は
一生忘れることができないくらいの衝撃でした。
(時々思い出し笑いするほど)
夫婦と言っても一口には語れないほど
いろんな形の夫婦があると思うけれど
貧乏を楽しめる夫婦っていいなぁ・・・。
(ちょっと違うけど)
もう何度読み返したかわからないけど
時々ふっと読み返したくなる大切な本です。
いつか小熊のゾルバに会ってみたい。
一緒に収録されている「人間の屑」も面白いです。
全ての「ダメ男好き」の女たちにオススメしたい一冊。
(そんな私もダメ男好き。)
AKANE