金の芽 | TOTAN オススメ本

金の芽

            金の芽―インド紅茶紀行

●金の芽 ~インド紅茶紀行~●
磯淵猛(著) 集英社文庫 ¥500

昨日、一昨日とTOTANではご来店のお客様に
チャイのサービスをしておりました。
(一応バレンタイン企画だったのですが^^;)

という訳で今日は紅茶の本をご紹介します。

この本は表紙の上品な装丁からは考えられないほど
ハードな内容の「旅本」です!いやほんとですってば!

紅茶研究家であり紅茶専門店の経営もされていて
プロの技術指導や一般への紅茶教室も開かれていて
「ティーエッセイスト」である磯淵さん。
(なんか物凄い肩書き!すげー!)

著者近影からの見た目では「ほんわかした紳士」
なのだけど、もうほんとこの本は凄いんです。

チャイについてここで少し書いてみます。

チャイとは主に中近東等で飲まれている
スパイス入りのミルクティーを指します。

スパイスを入れて作る場合は
カルダモン/シナモン/クローブ/ナツメグ
ペッパー/ジンジャーなどが一般的。

ミルクを沸かしそこに茶葉を投入し
煮出すのが特徴で日本で言う所謂「ミルクティー」
とは作り方が少し違います。

インドなどではほんの数円あれば路上の
いたる所で購入することができるのだそう。
(店主は残念ながらインドに行った事がありません)

暑い国で熱いチャイ、と考えると疑問が
浮かぶのは当然ですが砂糖をたっぷりと使った
甘ったるいチャイはほこりと暑さで
ヤラれてしまった身体には効くとのこと。

日本でもすっかりお馴染みになったチャイですが
ダストティーと呼ばれる安い茶葉で作った
本場インドのチャイは格別だと聞きます。

紅茶の中でも金の芽と銀の芽を多く含み
紅茶好きたちから高い評価を得ている紅茶と言えば

アッサムとダージリン。

そしてダストティーの正体はなんとこのアッサム。
ご存知インドは紅茶の産地だし
インドの全人口9億人(現在は10億人)の
ほとんどの人々が毎日「チャイ」を口にしている。
この事実に震えた磯淵さんはインドに旅立つのだ。

『誰が、どのような場所で、どんな思いで作っているのか。
もしこの紅茶が無かったら明日のインドは考えられない。
熱射の太陽を浴び、汗と汚れで疲れきった体を癒す唯一の
ものが紅茶なのだ。まさに神が与えてくれた生活水でもある。
そのアッサムをどうしても見たくなった。行きたくなった。』

あぁ、この方は本当にプロなんだなぁと思わずにはいられない。

当時アッサムは無差別テロが多発していてインド人でも
外国人でも金品を奪われ殺害されてしまうという地区で
誰に聞いても「危険だ」「他の紅茶産地にしろ」と言われたにも
かかわらず、敢えてそれでもアッサムに向かうのだ。

ほんわかした紳士だったイメージが読み進めていく内に
あれよあれよと「旅人」になっていくこの快感。
「旅行」ではなく危険と隣り合わせの「旅」なのです。

そう、やはりこの本は紅茶を巡る紀行本「旅本」なのだ。

彼の人柄と知識、そして探究心が読む人を魅了し
あたかも自分も同行しているかのような気持ちになる。

紅茶という1つの切り口から見えてくる物は
決して1つではない。うむむ…また読みたくなりました。

ちなみに店主のオススメのチャイレシピは
テキトーに作ったチャイに適量のラム酒を+するもの。
ぐいぐい飲めてしまうのでそういう意味では
オススメできませんが・・・オススメします。(どっちだ?)

紅茶が好きな人、インドに興味がある人、
ドキドキワクワクが好きな人にオススメの一冊です。

AKANE