ポビーとディンガン
ベン ライス (著) Ben Rice (原著) 雨海 弘美 (翻訳)
アーティストハウス \1260(税込)
「 妹にしか見えない
大切な友だち
ポビーとディンガン。
ゆくえ不明になった二人を
懸命にさがす兄と
町じゅうの人々がおりなす
小さな奇跡。せつなくて、
あたたかくて、いとおしい。
やさしい涙をさそう
世界一かわいくて、
けなげな兄と妹の物語。 」
と、オビに書いてあるのをみて、私はすっかり
「かわいいファンタジー」だと思って手に取りました。
読んでみると。
主人公の少年アシュモルは、妹の「目に見えない友達」の
存在を信じず、わざと意地悪をしたりいやみを言ったり、
採掘場で働いている、夢ばかり見ていて大酒飲みの父親と
「こんな所に引っ越したくなかった」「こんなはずじゃなかった」が
口癖の母親はしょっちゅう言い争っていたり。
まったく想像と違っていたのです。
そのうち、ポビーとディンガンが行方不明になるという事件が起きて、
それまでのアシュモルの、不機嫌で淡々とした、
けれども安定していた「日常」が、バランスを崩し始めます。
あんなにポビーとディンガンを嫌っていたアシュモルが、
どうして二人を探し始めたのか?
「妹にしか見えない友だち」を町の人々はどうやって探すのか?
「最初から最後まできれいな」ファンタジーではなくて、
悪意や疑りやいやみや怒りが、この物語を
「ファンタジー」にしているのではないかなと思います。
アシュモルや父親や母親、町の人々の心を
なにが動かしたのでしょうか。
一読ではわかりません。
またしばらくしてふと読み返す、
すすめにくいけど他の人にも読んで欲しい、
そんな気持ちになる本です。
さとこ