ピーコ伝 | TOTAN オススメ本

ピーコ伝

            ピーコ伝

●ピーコ伝●
ピーコ(著) 糸井重里(聞き手) 日経BP出版 ¥1365

赤裸々とはまさにこの本のこと。

かなり前の話だけど友達のT木君と飲んでる時
「今の芸能界でつきたいポジションは誰?」
という話になった。T木君はそういう話が大好きな人。

今現在私は雑貨屋の店主な訳でイキナリ芸能界に
デビューする筈もなくT木君だって勿論そんなことは
わかっているのだけど。お酒の席の話ですから。

ちょっと考えた後になぜか私は「ピーコ」と言っていた。
なれる訳がないのにねぇ。

それから少ししてこの本の書評をたまたま目にして
近所の本屋さんを探し回ったけどどこも置いてなかった。
諦めかけて、忘れかけてた頃たまたま書店で遭遇。
(きっと本に「呼ばれた」のだろうと思う)

そしてそれから少しして「おすぎとピーコ」の
空前の大ブレイクが始まった。

ブームという書き方はしたくないです。
だってこの本はブームだなんだなんて処にいない本だから。

ご存知の通り「オカマの兄弟」のおすぎさんとピーコさん。
おすぎさんは映画業界で、ピーコさんはファッション業界で
それぞれ活躍し、お二人の出演する番組は小気味いい会話と
笑いと癖と毒と愛のあるおしゃべりが魅力です。

TVに出てる人だからって「タレント本」ではありません。
本のタイトル通りこれは「ピーコ伝」つまり自伝的な本です。

生まれた時の話からゲイを自覚した時のこと
ファッションの世界で働き始めた時のこと
当時のアパレル業界のこと、芸能界のこと
左眼を失ってわかったこと、家族のこと
シャンソンのこと、セックスのこと、人間のこと
恋のこと、オカマとしての生き方のこと

初めからから終りまでがまるで
ジェットコースターのような波乱万丈伝。

読後の感想はまずは「もうとにかくまるでどこかの
BARで目の前のピーコさんとお酒を飲みながら
一晩中、朝までいろんな話を聞いてたような気分。」

こんな幸せな読書ってあるだろうか。

人間の魅力は「お金」でも「名誉」でも
「地位」でも「才能」でも「容姿」でもなく
「それらを生かしてどう楽しんでいるか」なのだと思う。

糸井さんはまえがきでピーコさんをこう形容している。
『ぼくは、ピーコさんのことを「日本のお母さん」だと思っている。』

さすが糸井さん。

この本は糸井さんの「同級生のようなツッコミ」も読みどころです。
興味深々で優しくて鋭い言葉に共感する。

人間は毎日呼吸して毎日欲求を満たして(満たしたいと思って)
生きてる訳だけどふと時々わからなくなっちゃう生き物だと思う。

そんな時、人生の先輩である先生たちの残してくれたもの
一つ一つに、奮い立たせてもらったり案外楽になったりする。

世界史の教科書には載らないかもしれない数々の人生が
少なくとも私の歴史には刻まれています。

AKANE