一千一秒物語 | TOTAN オススメ本

一千一秒物語

         一千一秒物語

●一千一秒物語●
稲垣 足穂 (著) たむらしげる (イラスト) 
リブロポート ¥2310 (税込)

月や星、晩や夕方、
黒猫や バーや シガレットや ムーヴィや
そんな素敵な物のたくさん詰まった
レトロでユニークで色あせない物語たち。

この本のなかには、とても短い物語が70篇も入っています。
そのどれもが、レトロでありながらもいまだにきらめくガラスのように、
現代の私たちにひとときの夢を見せてくれます。

この本に出会うまで、私は稲垣足穂さんと聞くと
「難しそう」「古くて読みにくそう」などと思い、
まったく興味の範囲外でした。
名前は聞いたことがあっても、どんな作品を書いた方なのか、
まったく知らなかったのです。

この本も、たむらしげるさんのイラストが好きで手に取りました。
たむらさんはオリジナルストーリーの絵本が多く、
そのたむらさんがすでに亡くなった方の文章に絵をつけるということは、
きっと何かが、とてもたむらさんの心を
打ったのではないかと思いました。

はじめてこの本を読んだとき、私はただびっくりしました。
こんなにレトロな中に、いや、その頃の日本に、
こんなおはなしがあっただなんて。
自由で、ナンセンスで、かつハイセンスで、
たくさんの小さな小さな話が集まって
ひとつのすてきな世界を作り出しているのです。

「月から出た人」 「星をひろった話」 「ハーモニカを盗まれた話」
「キスした人」 「月のサーカス」 「黒猫のしっぽを切った話」 
「はたしてビールびんの中に箒星が入っていたか?」

文字だけの2ページ、見開きのイラスト、また文字だけの2ページ、
また見開きのイラスト・・・・。
つぎつぎと、そして交互に現れる、
稲垣足穂の世界とたむらしげるの世界。
本の中に驚くほどの、奥行きと世界が感じられます。

「 ではグッドナイト! お寝みなさい
  今晩のあなたの夢はきっといつもとはちがうでしょう 」
           ~ 一千一秒物語より ~

さとこ


追記 クラフトエヴィング商会や
    アニメ化された「銀河鉄道の夜」が好きな方には
    特におすすめいたします。