ニューデリー日本人学校 | TOTAN オススメ本

ニューデリー日本人学校

●ニューデリー日本人学校●
峰 敏朗(著) 三修社 文庫 ¥420(当時の値段です。)

(↑ココをクリックでamazonに飛びますが新品の在庫は無いようです)

今回オススメする本、実はamazonに画像がありません。
それどころか既に絶版になってしまっているのか(未調べ)
ユーズド商品しか出てこないのです・・・残念でなりません。

だけどここ最近読んだ本でもかなり面白かった本なので
ぜひともこのブログで紹介したいと思います。
手に入れたいと思ってくださる方がいたら
なんとか探し出してみてくださいませ!

私はいつも「新しい本を売ってる本屋さん」で
いっぱい本を買いたいと思うのですが
(作家さんに敬意と感謝の気持ちを表したいので)
諸事情があってもっぱら「古本屋さん」がメインです。

古本屋さんと新しい本を売ってる本屋さんの違いは
「値段」と「発掘感」にあると思っています。

「値段」についてはプレミアがついていたり
百円均一になっていたりとみなさんもご存知のように
古本屋さんはかなりピンキリの世界ですよね。

そして「発掘感」についてですがこれはやはり
新しい本を売ってる本屋さんには無い感動です。

「その日その時たまたまだけど出逢ってしまった」

古本屋さんだけでなく私は今まで生きてきた中で何度となく
こういった「ここで会ったが百年目」に遭遇しています。

うちの雑貨屋もよくお客様に言われます。
「もうこれは目が合ってしまったし連れて帰ります!」と。
(勿論無断で連れて帰りはしませんが)

コレですコレ!
金銭的な問題ではなくそこだったのか!(今更納得しました)

という訳で実はこの本、以前古本屋さんでたまたま見つけて
本棚に並べてあった所謂「積ん読」になっていたのでした。

インド関連の本はこれまでにも何度か紹介してきましたが
私の本棚にある本の中で1番多いのがインド関連本です。

そう、私がインドに呼ばれるその日まで
私のインド本集めに終わりは来ないので増える一方。
(多分インドに行ったら行ったでまた増えると思います)

この本が発行されたのは昭和57年。(文庫になったのは昭和59年)
私が生まれたのは昭和53年・・・ということは当時の私は4歳。

日本がまだ消費税も導入されていなかった時代のインド。
(手元の本に¥420と当たり前に書いてあって懐かしくなりました)

著者である峰さんはインドのニューデリーにある
日本人学校に外務省派遣教員として
1975年4月から1978年3月まで勤務されていました。

私の少ない知識とネット上にあるインドの歴史を
あわせてみると峰さんが赴任された当時のインドは
パキスタン・バングラデシュの3国で戦犯釈放などの
協定が結ばれたばかり、地下核実験がされたり
インディラ・ガンジー首相が選挙法違反で有罪になったり
(えん罪だったようでまた同じ年に無罪となったようです)
と波乱だらけの時代だったようです。
改めてインドの歴史って面白いですよね。

そんな当時の時代背景を少し書いてみましたが実は
この本には当時の事件や歴史的事実などはあまり書かれていません。

だけれど「一人の普通の日本人教師がインドで感じた事」を
とてもストレートに、そして正直に書かれているのです。

それはまさしく私が知りたかったインドでした。

旅行者でもなく、インド通でもなく
日本人であることをエラソーに書く訳でもなく
一人の人間として、教育者としてインドの地で暮らし
そこに住むインド人や日本人の子ども達を通して
「人間」というものを考えたり新たな問題にぶつかる姿。

私が面白いと感じたエピソードはこの本の中に
いくつもありますがその中でもここ。

『 インドに住んで毎日を楽しく過ごすには、
  インド人と親しくなり、インドをよく知り、
  インドを理解することだと私は思う。
  けれども現実はなかなかそうはいっていない。
  インドに来てインドの貧しさに驚き、
  それがそのままインド人を蔑むことになれば、
  特に将来性ある子供たちの場合には大変な問題だと思う。

  悲しいことに日本人学校の子供たちの態度を通して、
  私は彼らのインド人への蔑みの目を何度も見た。
  私には耐えられないことだった。

  校庭で子供たちといっしょに昼食していると、
  近くの道路をトンガという馬車が走って行く。
  私はこう言ったことがある。

  「あれに乗ってみたいね。涼しそうだね」
  「先生、あれは貧乏人が乗るんだよ」

  という言葉が一年生の子供からごく自然に帰ってきた。
  「貧乏人」という言葉が何の抵抗もなく発せられる子供に、
  私は恐れを感じた。                  』

インドは日本と違ってカースト制[ジャーティー制]がありました。
(敢えて過去形にします。)それはご存知の人も多いだろうけど
職業ごとに決められた結婚や礼儀や職業などを守らねばならない
という制度でその身分の違いは肌の色や所作からわかるとも
言われています。日本と違う所は他にもたくさんあるけど
これは本当に大きな違いだなぁと思います。

職業によって分かれているということは
具体的に言うと身分の高い者は「掃除」や「運転」や
「料理」はしないし、それはしてはいけないことで
つまり「それをするべきは他の者」ということなのです。

インドに来て前任の教師から引継ぎで入居した家にも
「掃除人」や「小使い」や「庭師」がいるのですが
(↑これらは本文にでてくるそのままを敢えて使っています)
その人たちとの生活を通して見えてくる真実。

人間としての常識と思っていたものが揺るがされたり
でもそれは違う、と尊厳を見直したりの葛藤の日々。

「インド人」としてではなく
「人間」としてつきあっていきたいと願う峰さん。

親の海外赴任中だけの日本人学校だから、と
子どもにとって大切な時期を駄目にしたくないと思う峰さん。

インドで子ども時代を過ごしたのに
インドのことを何も知らない(知ろうともしない)のは
間違っている、と歴史の教育に取り組む峰さん。

この本は教育関係者だけではなく
インド好きだけではなく
様々な年齢といろんな職業の人に
ぜひとも読んで欲しい大切な一冊だと思いました。

いつものごとく私の言葉がつたないのが申し訳無い。

この本の1番最後に出てくる日本の某企業の人が
私は許せない。峰さんもさぞかしがっかりしたことと思う。

それにしても私の紹介したい本はいつもamazonに無いのが困ります・・・。

AKANE