かまわぬだより | TOTAN オススメ本

かまわぬだより

          かまわぬだより―江戸時代から伝わる、てぬぐい柄ポストカードブック

●かまわぬだより●
― 江戸時代から伝わるてぬぐい柄ポストカードブック ―
ピエ・ブックス ¥1365

みなさんは「洗う度に少しずつ馴染んでいく」
という言葉を聞いたら何を思い浮かべるだろうか。

「洗う」ものだからきっと陶器などの食器だ、とか
「馴染む」ものだから毛糸などの製品ではないか、とか
まず「馴染むのが心地良いもの=生活に関係するもの」を
考える方が多いことだと思います。調理器具とかもそうかな。

私は雑貨屋店主ですので「洗う度に少しずつ馴染んでいく」
と言うとまず思い浮かべるのは綿製品です。

織物だったり染物だったり編み物だったり。
とにかく使い勝手が良くて心地良くて素肌にも気持ち良い。
身近にあるものを見渡してもやはり綿のものは長持ちするし
何か切っても切れない縁のような関係だと思います。

みなさんも小さい頃に布のおむつしてませんでしたか?
私は学生の頃、日本の芸能(鬼剣舞)でサラシ巻いてました。

そんな訳で今日ご紹介するのは「手ぬぐい」の本です。

店主は今日、地元の公園に梅を見に行って来ました。
それで自分の中で忘れかけてた和の心を
なんとなく思い出してしまったのかもしれません。

実はこの本、数年前に友人Mちゃんから
お誕生日のプレゼントとして頂いたものです。

タイトルにもあるようにPOSTCARDブックになっていて
ミシン目に沿って切り取れるようになっています。

だけど勿体無くて店主は1度も使っていません。
だってどれもこれも本当に素敵なんだもの。

代官山に本店をかまえる「かまわぬ」さんは
今や都内にいくつもの支店をお持ちの会社さんです。

創業は古いのか?と思ったら1990年とのことなので
比較的新しい会社さんのようです。

私の友人にも古くからの「手ぬぐいマニア」がいます。

ここ数年の着物ブームもあって、
現代に生きる若者の「和」への欲求は
少しずつだけど確実に盛り上がってきている気がします。
そんなうちの店は相反するかのようにエスニック雑貨屋ですが。

ところでみなさんは手ぬぐいをお持ちでしょうか?

私は持ってます。
ごく定番の豆絞りのですが。
(これも学生の頃、太鼓の公演に必要で買ったのを持っています)

もともとは名前の通り「手を拭う」為の布でした。
入浴時や被り物などで使う他は贈答品や服飾にも使われていたそう。

江戸時代中期以降、芝居(歌舞伎)がファッションの場でもあった頃
歌舞伎俳優が自分の家紋を入れて作った手ぬぐいを舞台上で使用し
それは庶民たちの憧れの的となったようです。

「すげー!あの下がり藤カッコイイなー!」と
言ってたかどうかは知りませんが(下がり藤は店主の実家の家紋)
明治以降は「タオル」などが多く出回り始め、少しずつ
庶民の生活から姿を消していった「手ぬぐい」は
優れたデザインと使い勝手の良さ、そして何より染織などの
高い技術などを海外からも評価され今の時代にも大切にされている
日本の伝統文化の1つとなっているのです。

「素材も良く長持ちもして洗う度に馴染んでくる」のだとしたら
人間は一生に1枚だけの手ぬぐいでいいのでしょうか。

いえ、それは違います。

だって日本には素晴らしい四季があって
それを感じる「和」の心を持った感性豊かな人たちが多く
何よりも「粋」であることは私たち日本人にとって
今でもめちゃくちゃカッコイイことなのですから。

昔の人の生活を思ってみると
TVもインターネットも無い時代なのに
人々がとても豊かだったのではないかと思います。

そして流行に敏感でもあり
それとは別に「自分が好きなもの」を
とても大切にしていたのではないかと。

月を見ればそこにうさぎを住まわせ
お団子を拵えススキを刈ってお月見とシャレ込む。
狸たちは踊り出し酔っ払った狸に化かされる人も出てくる。

なんともロマンティックな昔の人よ。

この本に出てくる様々な模様の手ぬぐいたちを見ていると
その圧倒的な想像力に驚かされ、そして改めて
人間の面白さを感じることができます。

模様の可愛さ、大胆さ、突飛さ、色づかい、素材感
どれをとってもそこにあるのは「遊び心」なのです。

そりゃあ何枚も持っていたくなりますね。

今の日本は決して「貧しく」は無いのだけれど
「裕福」になりすぎたからこそこの「遊び心」を
どこかに忘れてきてしまったような気がしてなりません。

私は若造なので詳しい事はわからないけど
戦後からの高度成長期にはきっといくつもの
「捨てなくてはならないもの」があったのでしょう。

でもそれと引き換えに捨ててきてしまったのなら
今からでも拾いにいったらいいと思うのです。

・・・なんだか妙な話になってきてますかね??(苦笑)

今日は「エスニック雑貨屋」が
熱く「日本」を語ってしまいました。
だけどたまにはいいですよね。
だって日本もとっても面白いもの。

あ、そうそう。
江戸時代の人も「絵文字」使ってたって知ってますか?

「かまわぬ」 = 「鎌(絵)輪(丸)ぬ(カナ)」
「めでたい」 = 「めで(カナ)鯛(絵)」

などなどなど。

オヤジギャグにも近いですが、これはある意味
現代の「ギャル文字」と通づるものがありますね。

店主はあのギャル文字はあまり好きではないのですが
変化や発想の転換も文化の1つとしてとても面白く思います。

だって生きてるんだから当たり前じゃない。

ちなみにこの本には手ぬぐい文化についてのお話や
その翻訳も一緒に掲載されています。
外国人の方へのプレゼントにも喜ばれそうです。

そして巻末には手ぬぐいの使い方色々も載ってます。
ワインボトルを包んだり頭に巻いたりと本当に多様です。
どんなものも「使い方」って本当にセンス次第ですよね。

春の暖かさに小躍りしたら
貴方も「和」の楽しさを探してみませんか?

AKANE