夏の庭 ―The Friends― | TOTAN オススメ本

夏の庭 ―The Friends―

           夏の庭―The Friends  

●夏の庭 ―The Friends―●
湯本 香樹実(著) 徳間書店 ¥1470(税込)


この物語は、1992年にはじめて出版され、
9年後の2001年に改定版としてもういちど出版されました。
世界数十カ国で翻訳され、数々の賞を受賞しているので
ご存知の方も多いかと思います。

この本に出てくるのは、
三人の六年生の男の子と一人のおじいさん。

本書の帯で日本語版「スタンド・バイ・ミー」と紹介されているそのままに、
三人の男の子たちはある出来事をきっかけに、
死体を見てみたい、と考え始めます。

そしてなんと、近所に住む、年をとって生気のない
一人暮らしのおじいさんを見張ることにしたのです。

おじいさんを見張りつづけ、
「死とは何か?」について考えつづけた男の子たち。

死とは何か、生とは何か?
六年生の男の子がそれぞれに考えた生死感が、
大上段に構えて「教えて」くれるのではなく、
私たちにもそれぞれの生死感を問い掛けてきます。

こう書くと、なんだかとてもかたいお話のようですが、
実際の読み口は、とてもユーモラスなものです。
三人でごちゃごちゃ相談するところや、ちょっと子供っぽい行動や、
「見張る」といっても途中でだらけたりムキになったりするところなど、
読んでいてつい笑ってしまいます。

そして驚くほどきれいでリアルで感覚的な風景の描写。

最後には、「暗い」とか「重たい」とは違う、
しーんとした、静かな「考えの種」とでもいうべきものが心の中に残ります。

生や死について考えたい人にも、
「スタンド・バイ・ミー」の男の子たちの軽妙な会話を愛する人にも、
本のなかから立ちのぼるような季節を感じたい人にも、
つよくおすすめいたします。

さとこ