空飛び猫
●空飛び猫●
アーシュラ・K. ル・グウィン(著) 村上 春樹(訳) S.D. シンドラー(画)
講談社 単行本¥1575(税込) 文庫¥650(税込)
路地裏の、まったくふつうな猫のお母さんから生まれた
4匹の子猫たちには、背中に翼がはえていました。
けれども毎日の暮らしに忙しく、
母猫はそれが何なのかをゆっくり考えるひまもありませんでした。
しかし子猫たちが育ったある日、母猫は
ここを出てどこかへおいきなさい、と子猫たちに伝えます。
日々環境の悪くなってゆくここから、
飛び立ってゆくための翼なのだと。
4匹の子猫たちは慣れない翼を使い、
母猫の住む路地裏を離れ、遠くを目指して旅に出ます。
(まるまるとした体を浮かせるのは
けっこう大変なことなのですけれども。)
旅の途中で子猫たちが体験したこと、
行き着いた先で起きたこと。
そして子猫のふわふわさが、
まるで目の前の出来事のようにえがかれています。
「ゲド戦記」などの著者であるル・グインの思慮に満ちた文と、
村上春樹の読みやすくさっぱりとした翻訳で、
「文章を読んでいる」というストレスなく
物語の世界にひきこまれます。
猫が好きな人(子猫はむくむくでふわふわです)、
空を飛んでみたい人(現実的な大変さも味わえます)、に
おすすめいたします。
さとこ