TOTAN オススメ本 -3ページ目

南瓜とマヨネーズ

        ●南瓜とマヨネーズ●
        魚喃キリコ(著) 宝島社 ¥890


ナナナンさん作品の中で私が1番好きなのが
「南瓜とマヨネーズ」だと言うと大抵「あー」と言われる。

それは私の恋がいつも同棲から始まるからなのだろうか?
(なんか今モーレツな一人暴露大会の気分。)

『 あたしは恋人の
  せいちゃんと一緒に
  暮らしてる。
  いろいろ問題も
  あるけど、
  せいちゃんは優しくて
  愛しい存在だ。
  なのにある日、
  あたしは街で偶然
  昔の恋人ハギオに
  出会ってしまったのだ。
  好きで好きで
  しょうがなかった、
  あのハギオに・・・。 』

魚喃さんの代表作と言ったら多分だけど
「Water」か「痛々しいラヴ」なんだと思う。
どっちもせつなくて苦しくて痛快で気持ちいい。

それでも私は「南瓜とマヨネーズ」が好きだ。

女のことを書く漫画家さんは多い。
(この場合の漫画とは少女漫画ではない)
内田春菊さんも岡崎京子さんも桜沢エリカさんも
一条ゆかりさんも槙村さとるさんも矢沢あいさんも
その他たくさんの好きな作家(漫画家)さんが私にはいる。

汚くて苦しくてせつなくてどうしようもなくリアル。

ここまで書いてて気づいたけど、私が好きな作家さんは
ちゃんと「セックス」が描ける人たちばかりだ。

明日はひな祭り。
全ての女の子に私から捧げます。
勿論かつて“女の子”だった人にも。

AKANE

一千一秒物語

         一千一秒物語

●一千一秒物語●
稲垣 足穂 (著) たむらしげる (イラスト) 
リブロポート ¥2310 (税込)

月や星、晩や夕方、
黒猫や バーや シガレットや ムーヴィや
そんな素敵な物のたくさん詰まった
レトロでユニークで色あせない物語たち。

この本のなかには、とても短い物語が70篇も入っています。
そのどれもが、レトロでありながらもいまだにきらめくガラスのように、
現代の私たちにひとときの夢を見せてくれます。

この本に出会うまで、私は稲垣足穂さんと聞くと
「難しそう」「古くて読みにくそう」などと思い、
まったく興味の範囲外でした。
名前は聞いたことがあっても、どんな作品を書いた方なのか、
まったく知らなかったのです。

この本も、たむらしげるさんのイラストが好きで手に取りました。
たむらさんはオリジナルストーリーの絵本が多く、
そのたむらさんがすでに亡くなった方の文章に絵をつけるということは、
きっと何かが、とてもたむらさんの心を
打ったのではないかと思いました。

はじめてこの本を読んだとき、私はただびっくりしました。
こんなにレトロな中に、いや、その頃の日本に、
こんなおはなしがあっただなんて。
自由で、ナンセンスで、かつハイセンスで、
たくさんの小さな小さな話が集まって
ひとつのすてきな世界を作り出しているのです。

「月から出た人」 「星をひろった話」 「ハーモニカを盗まれた話」
「キスした人」 「月のサーカス」 「黒猫のしっぽを切った話」 
「はたしてビールびんの中に箒星が入っていたか?」

文字だけの2ページ、見開きのイラスト、また文字だけの2ページ、
また見開きのイラスト・・・・。
つぎつぎと、そして交互に現れる、
稲垣足穂の世界とたむらしげるの世界。
本の中に驚くほどの、奥行きと世界が感じられます。

「 ではグッドナイト! お寝みなさい
  今晩のあなたの夢はきっといつもとはちがうでしょう 」
           ~ 一千一秒物語より ~

さとこ


追記 クラフトエヴィング商会や
    アニメ化された「銀河鉄道の夜」が好きな方には
    特におすすめいたします。

タイでオモロイ坊主になってもうた

           タイでオモロイ坊主になってもうた

●タイでオモロイ坊主になってもうた●
藤川チンナワンソ清弘(著) 現代書館 ¥1890

私は今までに友達や見ず知らずの物好きな(失礼!)
皆様にいろんな本をオススメしてきました。

それは実生活でもそうで面白い本やモノを見つけると
面白さを誰かと共有したくてたまらなくなってしまうのです。
それは私が自己中なせいでもあるし、誰かと繋がりたいという
想いの形なのかもしれないなぁと最近思うようになった。

でも、1番感じている事は
「面白い」とは私にとって財産なのだ ということ。

つねづね迷惑な共有財産だと思う。
だけど私には富や名誉や実績はないけども
オモシロイものならたんまりあるぜ、という
自信でありこだわりであり自己表現なんだと思う。

今日の一冊は多くのみなさまがひいてしまうかもしれない本。

というのもタイトル通りお坊さんのお話だから。

今ちょっと「えー。」って思いませんでしたか?
それとも一瞬画像を見てここまで読んでくれないでしょうか?

でも安心してください。
だって私は「オモシロイモノ」が好きなAKANEですよ!
本はとにかく色々買い漁っているけど勿論、面白くない本や
書き方が斜に構えてるようなエラソーでムカつく本を(失礼!)
間違って買っちゃったことだっていっぱいあるけど・・・
ここでオススメするのは「オモシロイ本」だけです。

面白いからオススメしたいのであって
面白くなかったり嫌いな本は公に批判したくはないので
(好みの問題だとも思うけど)
本棚の影の方にひっそり置いてあります。

見るのもイヤな本は箱にしまってあります。

だって自分が好きな本(モノ)を誰かが批判してたら
それ見ただけでイヤな気持ちになるから。(経験済み)

日本人ぽいのかもしれないけれど
WEBでイヤな気持ちになるのももう疲れたので。

そんな訳で話を戻しますがこの本!
・・・すごいです。それ以外の言葉が浮かびません。

前もって言いますが私は「無宗教」です。
そしてどっちかというとキリスト教寄り(プロテスタント)。

だけど仏教って面白いし嫌いじゃない。
そしてもっともっと知りたいなぁと思う。

仏教と言っても系統がたくさんあるので一口には言えません。
私がここであれこれ書くよりみなさまの方がお詳しいかも。

物凄く大まかにい言うと仏教とはご存知の通り元々は
「ブッダの教え」が始まりなのですが、
年月をかけて広まっていく間に枝葉ができ
今では世界中に根を下ろしています。

藤川さんはテーラワーダ仏教「上座部仏教」のお坊様です。
日本では別名「原始仏教」「根本仏教」とも言われているのだそう。

お坊様の藤川さんの本がなぜそんなにも面白いのか。
それは藤川さんの過去に関係があります。

お坊様や悟りを開いた人々の中には
色々な過去を背負った人が多いと聞きます。
藤川さんもその一人。にこやかな笑顔からは
全く想像のできない過去をお持ちなのです。

鑑別所から出てきた当時の肩書きは
「住所不定、組織暴力団K組少年予備軍」。

働く事もせず繁華街をうろつき酒と女
恐喝ケンカに明け暮れる毎日。

建築屋社長に育てられ独立しやがては
金が全ての金の亡者になっていった藤川さん。

バブリーな地上げ屋を地で経験しているのだ。

女と酒と金に糸目をつけず
ゴロゴロ土地を転がしては肥えていった。

さて、そんな藤川さんがなぜお坊様になったのか。

そこがこの本の面白いところであり
藤川さんの魅力でもあるのだ。

藤川さんは作家ではないから、この本を
書くにあたって相当な苦労をされたそう。
確かに話が飛んだり戻ったりで
読みにくいと感じる部分は多少はある。

だけど人間、実際に話をする時に
きちんと筋道を立てて順序もありのままに
自分のことを話せる人間がどれだけいるだろうか。
(少なくとも私はムリです^^;)

話が飛んでも着地する場所にはまた意味がある。

この本ではブッダの教えも藤川さんの言葉で
書いてあるので彼の過去だけではなく今、振り返って
自分で昔の自分を振り返る藤川さんも見られる。

関西弁で汚い言葉も素直な感情も露にした
藤川さんの人柄が読む人を引き込んでいく。

ガツン!とカウンターパンチを喰らいます。

人間って何才からでも生き方を変えられるんだ。
当たり前なのに実行しようとしても容易くできるものじゃない。

だけどこうして生き方を変えた人がここにいる。

これはとてつもない人間史だと思う。

私がこの本を知ったのは恋するアジアです。
(季刊発行のミニコミ誌です。WEB日記も面白いよ!)

まわりを見渡せばいろんな大人がいるけど
もっといろんな先輩たちの話を聞いてみたい。

こうして藤川さんの半生を本として
残してくれた事に感謝したい気持ちで一杯です。

これは読むべし!

「いてよし」って言われたような気がして
パワーをもらえるそんなすてきな本です。
(ドラマ「すいか」の教授みたいにね!←パクリですみません)

AKANE

アジアの民話


●アジアの民話●
キャシー・スパニョーリ(著)
北島義信 高垣友海(訳) 同時代社 ¥1680


※画像がAmazonに無い場合は↑の著者名にリンクして
ありますので詳細はそちらでご確認くださいませ。

この本との出逢いは一軒の古本屋さんでした。
 
私にとって古本屋さんとは知識の泉であり
ディズ○ーランドのようなドキドキワクワクの国です。

この本に掲載されているアジアは以下の通り。

ラオス/日本/インド/朝鮮/マレーシア/ネパール
ベトナム/カンボジア/フィリピン/パキスタン
バングラデシュ/中国/チベット/スリランカ/ビルマ

※「朝鮮」や「ビルマ」と表記がなっているのは
古い話が多い「民話」なので線引きが難しいからなのでは?
と読み手である私は思いました。他意はないようです。

民話や昔話というとやはり「教訓を含んだもの」や
子どもたちに楽しみながら(また、怖がらせながら)
その地域の常識や物事を理解させていく方法の1つでもあります。

ですがこの本は大人が読んでも面白い。
(この本は一応大人向けに作られていますが)

ヤマンバや神様、そして王様や旅人が出てきます。
それはとてもお伽話的なのですがそのどれもが
現代に置き換えて考える事ができるお話なのです。

歴史や教科書に載らないこういうお話を後世に残す
仕事って人間そのものを育てているなぁと思います。

中から少しだけ抜粋を。

『     すべてにおわす神 -インド-

昔むかし、聖なる山の頂きに暮らす神ガネーシュ
(ガネーシャ)が庭で遊んでいました。
家の近くでは母親のパルヴァティが夕食を用意していました。
ガネーシュは退屈をもてあましていたので、子猫をつかまえて
いたずらをしていました。子猫は悲しげな鳴き声をあげましたが
ガネーシュはなかなかやめてくれず、しまいには子猫を放り投げたり
振り回したりして遊びました。ガネーシュがようやく飽きて子猫を
離そうとしたとき、誤って子猫の顔をひっかいてしまいました。

家へもどったガネーシュは、母親が顔に傷を負い、
血を流しているのを見ました。
「いったい誰がお母さんにそんなひどいことをしたんですか?」
怒りをまじえ、ガネーシュは尋ねました。
「今すぐ仕返しをしてきます、もう二度と
  こんなことはさせないぞ、させるもんか」
「いいかいガネーシュ。この傷はお前がつけたものなのだよ」
母親は悲しげに答えました。
「ぼくじゃないよ。そんなことしていないよ」
びっくりしたガネーシュは言いました。
「おまえはは私を傷つけていたことがわからなかったのだね」
母親はやさしく言いました。
「いいかい、おまえが庭であの子猫をひっかいたときに
 わたしの顔にも傷がついたのだよ。自然に生きるもの、
 たとえそれがどんなに小さな生き物でも、おまえがそれを
 傷つけるということは、わたしを傷つけていることと
 同じなのだよ。だからこれからは気をつけなさい」

(原作者注):すべての生きとし生けるものに対する
非暴力と慈悲の心は、アジアの信仰のなかで生きている。
この短い話において、女神パルヴァティは
すべての生き物を結びつける輪の中心である。
                             』

・・・こんなに抜粋して怒られてしまいますねきっと。

アジア各地の人々とその土地に根付いた宗教や
生活習慣、教訓、文化などが一話ごとにうかがえます。

旅に出てその土地の人と仲良くなったら
小さい頃にしてもらったお話なんかを聞いてみたい。
きっとその旅はもっと素敵な旅になる予感がします。

そして毎度毎度書いてることですが

違う、から面白い。
似てる、から楽しい。

私の全ての基準はここにあるように感じています。

子どもと一緒にこういう本を読む母に
いつかなる日がくるのかな・・・。

AKANE

トペトロとの50年

            トペトロとの50年―ラバウル従軍後記

●トペトロとの50年 -ラバウル従軍後記- ●
水木しげる(著) 中公文庫 ¥720

私は水木しげるさんが好きだ。
そしてここだけの話、妖怪はいると思っている。

私が水木さんの本を知ったのは小学生の頃。
近所で行われたバザー(フリマではなくて)で
カバーの無い漫画本の鬼太郎を¥10で買ったのがキッカケです。

画が緻密で暗くてアニメの鬼太郎の世界とは全く違って
一人で読むのがちょっと怖かった。
だけど登場人物は明るくてちょっとトボけていて
水木さんの描く水木さん本人も情けなくて(良い感じという意味)
ベッドの脇の本棚に置いて時々読んでいました。

その水木さんご本人が『鬼太郎の世界は彼らに似ている』と
言われるご本ならば読んでみたい!と手にとったのがこの本。

最初私は「ラバウル従軍後記」というサブタイトルから
てっきり水木さんが爆弾でやられた片腕の事や片腕を
無くしてからの苦悩などが多く描かれているのかと思っていた。

それは間違いだった。

事故のことはあっさりと文章の中に組み込まれただけで
当たり前のように語られていたのだ。
その事は私にはとてつもない事のように感じられた。

終戦間際、ラバウルに住もうと思ったこと
戦後、美術学校に通いながら紙芝居を描いていたこと
貸し本屋をやったり友人とヤミ商売をしていたこと
そんな生活の中『南方のきれいな緑とのんきな土人たち』
をいつも想い出していたということ。

[本人注釈(『土人という言葉は自然人という意味で、
バカにした訳ではない』)と書かれています。]

デビュー前の水木さんの絵も面白い。
そして、日本の戦後の日常も。

『一年に一回くらい、アメリカのチョコレートを
口にするが、うまくてアゴがはずれそうだった』

これは神戸で貧乏紙芝居絵描きをやっていた頃の話。
物凄い表現に圧倒された。すごく伝わってくる。

「ゲゲゲの鬼太郎」や「河童の三平」や「悪魔くん」を
世に出し、南方に“復帰する”軍資金を貯めた水木さん。

そこからの水木さんは担当編集者の目をごまかし
「ちょっと眩暈がする・・・」などと言っては
しょっちゅう日本を逃げ出していたのだそう。

『南方から戻ると彼らの奇妙な踊りと
  音楽を聴くのを常としていた』

戦時中にお世話になった大親友のトペトロとの再会。
そして、50年の交遊の末の突然の別れ。

『“土人”という言葉は尊敬の意味で“土の人”
というのは私は昔からあこがれだったのだ。』

水木さんは妖怪みたいだ。
私は妖怪みたいな人が大好きだ。

水木さんと仲良しの荒俣さんの本も読んでみたい。
(水木氏は“アリャマタコリャマタ”と呼んでいる)

AKANE

VOYAGE!

           VOYAGE!―ヴォヤージュ:旅

●VOYAGE!●
nahomi(著) フェリシモ出版 ¥1400

実はこの本は私の本ではありません。
正確にはさとこの本で私が無期限で借りているもの。

誰でも知ってる通販の会社、ご存知フェリシモさん。
そのバイヤーの一人でもあるnahomiさんのご本です。

一年くらい前にさとこから「アカネが好きそうな本があるよ」と
貸してもらったのがこの本とのキッカケでした。
読み終わったから返そうとしたら「良かったら店に置いて」とのこと。

ラッキー♪

そんな訳で時々本棚から取り出しては見ています。

今はイギリスに住んでいらっしゃるnahomiさんの選んだ
世界135カ国、1000点以上の雑貨を掲載しています。

商品としてオーダーはしなかったけど気に入ったもの、
一目惚れした1点物、売り物じゃないけど可愛かったもの、
旅先で見つけたヘンなモノ、おいしいモノ
nahomiさんの「おさとう袋」や「切手」のコレクション、
イギリスのご自宅とお子様、私服公開、と
とにかくnahomiワールド満載のご本。

お店を構えるのではなくバイヤーとして生きること
そんな生き方もあるのだなーと当たり前の事に気づきました。

国や文化によってテイストや素材は違うものの
カワイイものはやはりカワイイのです。

缶詰1つとっても現地の人々の目には
当たり前の日常風景の1つですが
日本人である私たちにとってはどれもがカワイイ。
(勿論可愛くないのもありますが)

異国の文字や風景を切り取った雑貨や食べ物は
いつの時代も私たちをドキドキワクワクさせてくれます。

違う、から面白い。
似てる、から楽しい。

旅に出てしまいたくなるワンダー本です。
Von Voyage!

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昨日は法事でお休みさせて頂いておりました。
今まで休みの日の記事を追々UPしていたのですが
過去に記事を掲載するよりも新しい日に掲載した方が
読んで下さってるみなさまも私も都合がイイと気づいたので
これからはお休みした日はスルーでお願いします^^;

まだまだご紹介できてない面白い本がいっぱいです。
頭が追いついてない感じです。もっとオススメしたいのに。
言葉が見つかったら私の大好きな大切な本たちもUPしますね。
じっくりコトコトお待ちくださいませ。

AKANE

ピーコ伝

            ピーコ伝

●ピーコ伝●
ピーコ(著) 糸井重里(聞き手) 日経BP出版 ¥1365

赤裸々とはまさにこの本のこと。

かなり前の話だけど友達のT木君と飲んでる時
「今の芸能界でつきたいポジションは誰?」
という話になった。T木君はそういう話が大好きな人。

今現在私は雑貨屋の店主な訳でイキナリ芸能界に
デビューする筈もなくT木君だって勿論そんなことは
わかっているのだけど。お酒の席の話ですから。

ちょっと考えた後になぜか私は「ピーコ」と言っていた。
なれる訳がないのにねぇ。

それから少ししてこの本の書評をたまたま目にして
近所の本屋さんを探し回ったけどどこも置いてなかった。
諦めかけて、忘れかけてた頃たまたま書店で遭遇。
(きっと本に「呼ばれた」のだろうと思う)

そしてそれから少しして「おすぎとピーコ」の
空前の大ブレイクが始まった。

ブームという書き方はしたくないです。
だってこの本はブームだなんだなんて処にいない本だから。

ご存知の通り「オカマの兄弟」のおすぎさんとピーコさん。
おすぎさんは映画業界で、ピーコさんはファッション業界で
それぞれ活躍し、お二人の出演する番組は小気味いい会話と
笑いと癖と毒と愛のあるおしゃべりが魅力です。

TVに出てる人だからって「タレント本」ではありません。
本のタイトル通りこれは「ピーコ伝」つまり自伝的な本です。

生まれた時の話からゲイを自覚した時のこと
ファッションの世界で働き始めた時のこと
当時のアパレル業界のこと、芸能界のこと
左眼を失ってわかったこと、家族のこと
シャンソンのこと、セックスのこと、人間のこと
恋のこと、オカマとしての生き方のこと

初めからから終りまでがまるで
ジェットコースターのような波乱万丈伝。

読後の感想はまずは「もうとにかくまるでどこかの
BARで目の前のピーコさんとお酒を飲みながら
一晩中、朝までいろんな話を聞いてたような気分。」

こんな幸せな読書ってあるだろうか。

人間の魅力は「お金」でも「名誉」でも
「地位」でも「才能」でも「容姿」でもなく
「それらを生かしてどう楽しんでいるか」なのだと思う。

糸井さんはまえがきでピーコさんをこう形容している。
『ぼくは、ピーコさんのことを「日本のお母さん」だと思っている。』

さすが糸井さん。

この本は糸井さんの「同級生のようなツッコミ」も読みどころです。
興味深々で優しくて鋭い言葉に共感する。

人間は毎日呼吸して毎日欲求を満たして(満たしたいと思って)
生きてる訳だけどふと時々わからなくなっちゃう生き物だと思う。

そんな時、人生の先輩である先生たちの残してくれたもの
一つ一つに、奮い立たせてもらったり案外楽になったりする。

世界史の教科書には載らないかもしれない数々の人生が
少なくとも私の歴史には刻まれています。

AKANE

お気をつけてよい旅を!

            お気をつけてよい旅を!―日本人女将インド安宿繁盛記

●お気をつけてよい旅を! 日本人女将インド安宿繁盛記●
モハンティ三智江(著) 双葉社 ¥1575

外国で生活をすることは私の憧れだ。

実際に身近に海外生活をしている人がいるし
TVなどでそういう番組を見ると心が躍ります。

留学も含めて私には未知の世界である「外国」。
「旅行」ならまだしもそこで「生活」するという事に
口では言い尽くせない程の苦労があることは
なんとなく想像していた私ですが、この本を読んで
その大変さ、そして楽しさを再確認することができました。

1981年8月。彼女がフリーのライターをしていた頃に
初めてインドを訪れた所からこの本は始まります。
今の私と同じ歳に彼女はインドへ「呼ばれる」ことになった。

当時、ホテルのマネジャーをしていた彼との
結婚までのこと、自らがホテル経営をしようと思ったキッカケ
女将を始めてからの苦悩と、宿泊客や経営にまつわる人間関係
「インド人」と「日本人」の根本的な違いなどなど
とても普通では経験のできないような出来事の嵐。

この本の良い所は「いいところ」ばかりを書いてはいない所。

オフシーズンの客がまったく入らない時のこと
経営に関する色々、インド人との仕事のこと(工事など含めて)
とにかく彼女の身に起こった事を正直に書いているのだ。

それは読み進めていく内に誰しもがわかるはず。

『私のルーツは結局日本人、
何十年インドに住もうとも
決してインド人にはなり切れずに、
日本人としての業を抱えたままに、
ときにインドとのギャップにあがきながら
暮らしていくことになるだろうと、
諦観にも等しく悟り切っていた』

これはインドに暮らして12年目の彼女の言葉だ。

同じ「経営者」という観点からも勿論、物価や
文化や年代やいろんなものは違うのだけど私は
なんだか他人事とは思えず親近感を持ってしまった。

そして勿論、海外で生活する三智江さんへの
強い尊敬と憧れ、今の自分と理想の自分とのズレも。

後半は彼女の覗いたインド、として
インド旅行の際の気をつけたいあれこれや
様々なインド情報が掲載されている。

私がもしインドに「呼ばれる」時には
ぜひ彼女に会いにいこうと思っている。

そしてお酒を飲みながら旅人である私に
いろんなお話を聞かせて頂こうと思っています。

前にも書きましたが単なる「成功本」ではなく
失敗もある「成功本」からは私はパワーをもらうことが
できると思っています。共感の多さとか。

この本も私の血となり骨となってくれている大切な一冊です。

旅に出る全ての人に私からも・・・
「お気をつけてよい旅を!」

AKANE

ポビーとディンガン

           ポビーとディンガン

ベン ライス (著) Ben Rice (原著) 雨海 弘美 (翻訳) 
    アーティストハウス \1260(税込)

「 妹にしか見えない
  大切な友だち
  ポビーとディンガン。
  ゆくえ不明になった二人を
  懸命にさがす兄と
  町じゅうの人々がおりなす
  小さな奇跡。せつなくて、
  あたたかくて、いとおしい。
  やさしい涙をさそう
  世界一かわいくて、
  けなげな兄と妹の物語。  」

と、オビに書いてあるのをみて、私はすっかり
「かわいいファンタジー」だと思って手に取りました。

読んでみると。
主人公の少年アシュモルは、妹の「目に見えない友達」の
存在を信じず、わざと意地悪をしたりいやみを言ったり、
採掘場で働いている、夢ばかり見ていて大酒飲みの父親と
「こんな所に引っ越したくなかった」「こんなはずじゃなかった」が
口癖の母親はしょっちゅう言い争っていたり。
まったく想像と違っていたのです。

そのうち、ポビーとディンガンが行方不明になるという事件が起きて、
それまでのアシュモルの、不機嫌で淡々とした、
けれども安定していた「日常」が、バランスを崩し始めます。

あんなにポビーとディンガンを嫌っていたアシュモルが、
どうして二人を探し始めたのか?
「妹にしか見えない友だち」を町の人々はどうやって探すのか?

「最初から最後まできれいな」ファンタジーではなくて、
悪意や疑りやいやみや怒りが、この物語を
「ファンタジー」にしているのではないかなと思います。

アシュモルや父親や母親、町の人々の心を
なにが動かしたのでしょうか。

一読ではわかりません。
またしばらくしてふと読み返す、
すすめにくいけど他の人にも読んで欲しい、
そんな気持ちになる本です。

さとこ

金の芽

            金の芽―インド紅茶紀行

●金の芽 ~インド紅茶紀行~●
磯淵猛(著) 集英社文庫 ¥500

昨日、一昨日とTOTANではご来店のお客様に
チャイのサービスをしておりました。
(一応バレンタイン企画だったのですが^^;)

という訳で今日は紅茶の本をご紹介します。

この本は表紙の上品な装丁からは考えられないほど
ハードな内容の「旅本」です!いやほんとですってば!

紅茶研究家であり紅茶専門店の経営もされていて
プロの技術指導や一般への紅茶教室も開かれていて
「ティーエッセイスト」である磯淵さん。
(なんか物凄い肩書き!すげー!)

著者近影からの見た目では「ほんわかした紳士」
なのだけど、もうほんとこの本は凄いんです。

チャイについてここで少し書いてみます。

チャイとは主に中近東等で飲まれている
スパイス入りのミルクティーを指します。

スパイスを入れて作る場合は
カルダモン/シナモン/クローブ/ナツメグ
ペッパー/ジンジャーなどが一般的。

ミルクを沸かしそこに茶葉を投入し
煮出すのが特徴で日本で言う所謂「ミルクティー」
とは作り方が少し違います。

インドなどではほんの数円あれば路上の
いたる所で購入することができるのだそう。
(店主は残念ながらインドに行った事がありません)

暑い国で熱いチャイ、と考えると疑問が
浮かぶのは当然ですが砂糖をたっぷりと使った
甘ったるいチャイはほこりと暑さで
ヤラれてしまった身体には効くとのこと。

日本でもすっかりお馴染みになったチャイですが
ダストティーと呼ばれる安い茶葉で作った
本場インドのチャイは格別だと聞きます。

紅茶の中でも金の芽と銀の芽を多く含み
紅茶好きたちから高い評価を得ている紅茶と言えば

アッサムとダージリン。

そしてダストティーの正体はなんとこのアッサム。
ご存知インドは紅茶の産地だし
インドの全人口9億人(現在は10億人)の
ほとんどの人々が毎日「チャイ」を口にしている。
この事実に震えた磯淵さんはインドに旅立つのだ。

『誰が、どのような場所で、どんな思いで作っているのか。
もしこの紅茶が無かったら明日のインドは考えられない。
熱射の太陽を浴び、汗と汚れで疲れきった体を癒す唯一の
ものが紅茶なのだ。まさに神が与えてくれた生活水でもある。
そのアッサムをどうしても見たくなった。行きたくなった。』

あぁ、この方は本当にプロなんだなぁと思わずにはいられない。

当時アッサムは無差別テロが多発していてインド人でも
外国人でも金品を奪われ殺害されてしまうという地区で
誰に聞いても「危険だ」「他の紅茶産地にしろ」と言われたにも
かかわらず、敢えてそれでもアッサムに向かうのだ。

ほんわかした紳士だったイメージが読み進めていく内に
あれよあれよと「旅人」になっていくこの快感。
「旅行」ではなく危険と隣り合わせの「旅」なのです。

そう、やはりこの本は紅茶を巡る紀行本「旅本」なのだ。

彼の人柄と知識、そして探究心が読む人を魅了し
あたかも自分も同行しているかのような気持ちになる。

紅茶という1つの切り口から見えてくる物は
決して1つではない。うむむ…また読みたくなりました。

ちなみに店主のオススメのチャイレシピは
テキトーに作ったチャイに適量のラム酒を+するもの。
ぐいぐい飲めてしまうのでそういう意味では
オススメできませんが・・・オススメします。(どっちだ?)

紅茶が好きな人、インドに興味がある人、
ドキドキワクワクが好きな人にオススメの一冊です。

AKANE